Q.旅先で気に入った特産品、帰宅後に通販で買う人は多い?
2026-06-18 公開
答え
旅先で気に入った特産品を、帰宅後に通販で買い直す人は確かに一定数います。ただし「観光のあとECで買ったか」を国内旅行者について全国規模で直接測った公的データは、ほぼ存在しません。最も近いのは訪日外国人の調査で、お土産を気に入った人の58.2%が帰国後も買い続け、うち24.4%は越境EC・通販を使っていました(農林水産省、2019年)。
「観光→通販」を直接測ったデータは、実はほとんど無い
私たちが探したかぎり、「この土地を旅行した→帰宅後にその地域の産品をネット通販で買った」という購買の流れを、日本人旅行者について全国規模で直接尋ねた公的オープンデータは見つかりませんでした。観光統計は「誰が・何回来たか」を、EC統計は「何がどれだけ売れたか」を測りますが、その2つを結ぶ「観光が事後の通販購入につながったか」という問いは、統計の制度上ほぼ空白になっています。だからこそ、近いデータを組み合わせて推し量るしかありません。
一番近いデータ:訪日客の58.2%が帰国後も買い続ける
国内旅行者ではなく訪日外国人のデータですが、農林水産省が委託した「平成30年度 お土産市場行動調査」(三菱UFJリサーチ&コンサルティング実施、2019年3月公表)が、この問いに最も近い実測値です。7か国2,400人への調査で、日本で買った食品のお土産を「買って良かった」と感じた人の58.2%が帰国後も継続して購入。その購入手段として日本からの越境EC・通販を挙げた人は24.4%で、中国では35.6%に達しました。対象が訪日外国人・食品に限られる点には注意が必要です。
58.2%お土産を気に入った訪日客の帰国後継続購入率
24.4%継続購入のうち越境EC・通販を使った割合
35.6%越境EC利用が最も高い中国の数値
国内向けの研究は、ごくわずか
観光体験がその後のEC購入につながる流れを国内側から直接調べた研究は、桃山学院大学・辻本法子教授の一連の研究がほぼ唯一です。中国人観光客を対象にしたアンケート(2017〜2018年実施)では、日本で好きになった食品のお土産をその後ECで越境的に買った経験者が6割を超えました(「よくする」21.5%+「したことがある」43.3%)。ただしこれも中国人・食品・約9年前のデータで、日本人観光客全体には広げられません。
6割超好きになった食品土産をECで再購入した経験(中国人観光客)
21.5%「よくする」と答えた割合
43.3%「したことがある」と答えた割合
近い指標で考える:ふるさと納税・関係人口・通販市場
直接データが無いなら、近い指標をつなぐしかありません。地域とのつながりが事後の購買や訪問に波及することは、いくつかの調査から読み取れます。ふるさと納税の寄附者の10.4%が「寄附先の産品を普段の買い物でも意識的に選ぶようになった」、9.4%が「寄附を機にその自治体を実際に訪問した」と答えています(RIETI、2023年)。地域に継続的に関わる「関係人口」は全国で約2,263万人と推計され(国土交通省、2025年)、地域産品も扱う食品通販市場は5兆円を超えました(矢野経済研究所、2025年)。いずれも「観光が起点」とは言い切れない近い指標ですが、地域との接点が事後の消費に結びつく土壌があることは示しています。
| 指標 | 数値 | 出典(年) |
|---|---|---|
| ふるさと納税:寄附先の産品を普段の買い物で意識的に選ぶように | 10.4% | RIETI(2023) |
| ふるさと納税:寄附を機に当該自治体を実際に訪問 | 9.4% | RIETI(2023) |
| 「関係人口」と推計される全国の人数(18歳以上) | 約2,263万人 | 国土交通省(2025) |
| 国内の食品通販市場規模 | 5兆74億円 | 矢野経済研究所(2025) |
データの空白は、奈良にとっての機会かもしれない
奈良は柿の葉寿司・三輪そうめん・吉野葛・大和茶など「また食べたい」特産品の宝庫です。にもかかわらず、「奈良を旅した人が帰宅後にどれだけ奈良の産品を通販で買っているか」を示すデータは、奈良県にも全国にもありません。観光の入込客数や消費額は観光庁・奈良県の調査で追えますが、その先の「旅のあとの通販」は誰も測っていない領域です。逆に言えば、自治体や事業者がここを調べれば、観光を一過性で終わらせず継続的な売上につなげるヒントになります。まずは下のデータセットで、奈良の観光消費の「今」を確かめてみてください。